相続放棄を自分で手続きする方法

2021 年 12 月 2 日

「遺産の相続放棄を自分でやってみた」と調べると、多くの法律事務所、司法書士事務所のコラムが見つかります。

実際、自分で手続きした人は少ないと思いますし、まして、この楽しくもない経験をブログに残す人も少ないのは理解できます。

私が体験することはもう二度とないですが、誰かから聞かれた時に手助けになるよう、細かい手順や感想を残します。

相続放棄手続きは自分でやるべき? 司法書士や弁護士に頼むべき?

基本的には、司法書士や弁護士に相談する方がいいと思います。相続放棄する前に、

  • 相続するか
  • 放棄するか
  • 限定で相続するか

を決めます。ここで悩む場合は、専門家に相談した方がいいでしょう。

血縁者が亡くなった場合相続関係以外にもやるべきことがたくさんあります。私も当初は司法書士に依頼するつもりでした。でも、いろいろ調べているうちに手続き方法が見えてきて、自分でも出来そうだな、というかできるな、と思い、自分で手続きしました。

相続か放棄かで、悩む必要がなく、お家争いもなく、放棄一択の場合は自分で手続きしてもいいと思います。

相続放棄は、亡くなったことを知ってから3カ月以内の期限があるので、期限を過ぎそうとか過ぎてしまった場合は弁護士や司法書士に相談しましょう。

司法書士に頼むべき? 弁護士に頼むべき?

私が調べた限り、司法書士は3〜5万で引き受けてくれる(必要経費は別途必要)代わり、手続き自体は自分ですることになります。弁護士は10万程度かかりますが全てを引き受けてくれるようです。

相続するか、放棄するかの相談はどちらでも対応してくれます。

司法書士の「手続きは自分でする」は、「自分の本籍と、故人の本籍を取得してください」と指示を仰いで、実際取り寄せるのは自分でする、となります。そのため、収入印紙代や切手代などの必要費用は別途かかります。手続きの中で届く照会書も自分に届きます。そのあと司法書士に相談して返信する内容を聞いてから、自分で裁判所に返信します。多分そんな感じです。間違っていたらすいません。

基本的には司法書士でいいようですが、相続問題で争っているとか、手に負えない感じになっていたら迷わず弁護士に相談かなと思います。私も被相続人が油田を持ってた!とかなら弁護士に相談したかなー。

家庭裁判所に電話で聞くのもあり

相続放棄を自分で手続きする際、手続きの中で悩むことがあると思います。ネットにある情報が自分と当てはまらない時どうしたらいいのかわからないことが何度かありました。

その時は、手続きする家庭裁判所に電話で聞くのもいいと思います。私は3回くらい電話で確認しました。3回目は担当の方に覚えられてしまいました。あまり直接電話で聞く人はいないのかもしれません。

家庭裁判所によって対応が違うかもしれませんが、私が相続放棄をした時の、静岡市の家庭裁判所の担当の方はとても親切に教えてくださいました。ありがとうございました。

裁判所の方が教えてくれるのは「相続放棄の方法」だけです。相続するか放棄するかの相談とかは対象外です。あしからず。

私はフリーランスで、テレワークだったので、家庭裁判所に電話できましたが、フルタイムで働いている方は、司法書士に相談する方がいいかもしれません。

自分で相続放棄する方法

実際相続放棄する方法をまとめます。すべて郵送で相続放棄をする方法になります。

戸籍謄本を入手する

自分の戸籍謄本なら、マイナンバーカードでコンビニで取れる方もいるかもしれません。あいにく、私の場合はマイナンバーカードでの取得ができなかったので、本籍のある静岡市役所に郵送で依頼します。必要なのは以下の書類です。

※被相続人とのつながりに応じて必要な書類が異なります。詳しくはこちらで調べられます。私は「【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】に該当します)。

  1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
  3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  4. 申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

上記のように書かれていますが、どれが必要かわからなかったので「静岡市葵区区役所戸籍住民課」に電話して聞きました。最終的に必要なのは以下。

  • 自分(相続人)の戸籍謄抄本 450円
  • 亡くなった方(被相続人)の附票 300円

区役所の戸籍住民課の方は相続放棄の手続きに詳しいわけではないので、これという答えはなかったのですが「多分、私と被相続人の繋がりがわかる戸籍証明と、被相続人が無くなっていることがわかる戸籍証明があればいいと思うんですよねー」と話しながら必要な書類を教えてもらいました。

静岡市のウェブサイトより引用。戸籍証明を郵送で発行する際の申込書。

「必要な戸籍証明は何ですか」にたいして「なんですかね・・」と質問したわけです。

*コラム*

相続放棄の申述書に、被相続人の負債額を記入する欄があります。負債額がわからない場合、CICというところに依頼することである程度の負債額を調べることができます。その際、被相続人の「除籍・原戸籍謄抄本」が必要になるので、私は今回まとめて依頼しました。

除籍・原戸籍謄抄本の手数料は1枚750円なのですが、引っ越しを繰り返しているなどで、情報が多いと複数ページに渡ることがあります。区役所に問い合わせても見積もりは出してもらえません。手数料は郵便小為替で払います。不足している場合、連絡が来て追加の郵便小為替を送り、受領された時点で戸籍証明を発行し、送り返してくれるので時間もお金もかかります。そのため、郵便小為替を多めに送り、過剰分は郵便小為替で返金されます。

※ある程度の負債、というのは、CICで調べられるのは借入金とかなので、闇金とか? 把握できないこともあるそうです。また、借入業者に死亡の連絡が入ると、情報は削除されるんだそうです(連帯保証人とかに移るのかな?)。なので、調べるなら早めがいいそうです。

のちのち分かったのですが、負債額がわからない場合は「不明」と書けばいいので、1500円もした除籍・原戸籍謄抄本は不要でした。

また、CICに調査を依頼する際、戸籍謄本の原本が必要なのですが「返却希望」と明記することで、調査結果と一緒に送り返してもらえるので、相続放棄の手続きに使い回すことができますよ。

自分のものと、被相続人のもの、2枚の申込書を提出しました。

戸籍謄本を取り寄せるのにかかった費用

  • 自分(相続人)の戸籍謄抄本 450円
  • 亡くなった方(被相続人)の附票 300円
  • 郵便小為替発行手数料 100円(2022年1月時点で200円に値上がりしています)
  • 身分証明コピー代 20円
  • 戸籍証明等交付請求書 の印刷代 20円
  • 送料と返信用の切手代 94円×2
  • 送信用封筒代(手持ちを使いました)
  • 返信用封筒代(手持ちを使いました)

    以下不要だったけどかかった費用
  • 除籍・原戸籍抄本 1500円
  • 郵便小為替発行手数料 200円

以上、1,078円(不要だったけど実際支払った額 2,778円)でした。

1週間くらいで必要書類を返送していいただけました。ありがとうございます。

相続放棄の申述を家庭裁判所に送る

相続放棄の申述先は、被相続人最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。 裁判所のサイトで調べることができます。もしくは「対象の管轄の家庭裁判所名 相続放棄」で検索すれば、管轄が見つかると思います。

戸籍証明等の必要書類が足りていない場合は、家庭裁判所から追加の要請があるそうなので、とりあえず出してみる、でもいいかもしれませんが、手間を減らしたければ、家庭裁判所に確認したほうがいいです。私は戸籍証明一式が届いた後、家庭裁判所に電話して、齟齬がないか確認しました。

「被相続人の本籍と名前、その下に除籍と書いてあって〜」と入手した戸籍証明の特徴を伝えると「それで間違いありません」と丁寧に教えていただきました。家庭裁判所のご担当の方、お手数おかけしました。本当にありがとうございました。

基本的なことですが、相続放棄の期間は、被相続人の死亡を知った日から3カ月以内です。知った日基準なので、1年後に亡くなったことを知ったなら、その日から3カ月です。

また、被相続人の遺産を既に引き継いでいる場合(預金を使ったとか遺品を整理したとか)は相続放棄できません。

相続放棄申述書の書き方

申述書1枚目の記入例です。裁判所のサイトから引用。申述書もここからダウンロードできます。

1枚目は特に悩むことはないかと思います。印に使ったはんこはこの後も使うので覚えておくといいです。

続いて2枚目。

こちらに悩みました。

被相続人が生前、身元保証支援のタスカルを利用していたため、タスカルのご担当者さまが亡くなったことを知らせてくださいました。その際、財産目録を添付いただいていいたので、資産の欄は入力できましたが負債がわかりませんでした。

調べたところ、上にも書きましたが、CICで調べられることがわかりました。しかし、家庭裁判所に確認したところ、わからない時は「不明」でいいと教えていただきました。分かってるのに隠すのはもちろんダメです。

放棄の理由も、5つに当てはまる項目がない場合は、6に書けばいいのですが、不安だったので家庭裁判所に確認しました。

家庭裁判所に相談する中で、タスカルから届いた財産目録も念のため同封することになったのでコピーして送ったのですが、この場合、1枚目の添付書類3枠目に記入すべきか確認したところ、不要とのことでした。わからないことは質問するのが正確です。

必要事項を記入し、収入印紙を貼ります。自分の戸籍謄抄本、被相続人の附票、連絡用の切手(裁判所ごと異なるとのことなので電話で確認しました)を同封して郵送します。普通郵便でもいいのですが念のため簡易書留で送りました。

相続放棄にかかった費用

相続放棄に必要な費用は以下。

  • 収入印紙800円分(申述書1枚目の左上枠内に貼ります)
  • 申述書印刷代 20円
  • 連絡用切手 84円 3枚と10円3枚
  • 発送費 529円
  • 送信用封筒代(手持ちを使いました)

以上です。合計1631円でした。返信用封筒の同封は不要です。いまさらですが、レターパックライトで送ったほうが安かったですね。レターパックでも大丈夫なのかな(確定申告はダメだったので)。

収入印紙は申述書に貼り、連絡用切手は、郵便局で購入した時に入れてもらった小さな透明の袋に入れたまま同封しました。

*コラム* 複数人一緒に相続放棄できるのか

裁判所の相続の放棄の申述の 6. 申述に必要な書類 にあるように、被相続人との繋がりにより、必要な書類が異なります。そのため、被相続人との親等が同じ場合は一緒に手続きできます。

一緒にできる、といっても、重複する書類が不要になるだけなので同時に申請するメリットはそこまでない気がします。

例えば、私と兄が相続放棄手続きをする際、後に相続放棄手続きをする人は、「被相続人の住民票除票又は戸籍附票」や「被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本」、「申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本」は重複するため不要になります。

申述人の本籍が一緒なら、それも不要です。その場合、後に相続放棄をする人は、申述書に収入印紙を貼って連絡用切手を入れるだけでOKです。

同時に相続放棄する場合、必要書類を同封していない方の書類が先に家庭裁判所に届いてしまうと、書類不備となる可能性があるので、まとめて送ってください、と言われました。

この場合にかかる費用は、

  • 収入印紙800円分 *2
  • 申述書印刷代 20円 *2
  • 連絡用切手 84円 3枚と10円3枚 *2
  • 発送費 529円

となります(2,733円)。

照会書が届くので回答の上、返送する

相続放棄申述書を送ってから6日後に、照会書が届きました。「申述したのはあなたの意思によるものですか?」と確認する文章が書かれていて「回答書」の欄に自分の名前を書き、文末に申述人として自署で名前を書きます。その横に印を押すのですが、申述書に使ったハンコを使ってください、とのことなので、申述書に使ったハンコを覚えておきましょう。

照会書の冒頭に「令和3年(家)第XXXX号 相続放棄申述受理事件」と書かれていて、あ、これ、事件なんだと思いました。事件。。

発行日は、私が申述書を送った翌日になっていて、回答期限は2週間でした。

回答期限内に返送します。

相続放棄受理通知書が届きます

問題なければ、2週間ほどで、「相続放棄受理通知書」が届きます。これにて相続放棄完了です。連絡用の切手は3回分送ったのですが、照会書と通知書しかなかったので、1回分返却されました。切手で送り返されても。。いまどき何に使うのとなりそうですが、私は切手を使うので問題ないです。

「相続放棄受理通知書」は再発行してもらえないので大切に保管します。もしくはスキャンしてクラウドに保存すれば安心かと思います。

受理通知書に、受理証明書の発行を促す一文がありますが、面倒なのでしませんでした。今後、被相続人に関する問い合わせがあった際、放棄した証明に使うのですが、受理通知書に書かれている事件番号があれば本人でなくても発行できるので必要なら事件番号だけ伝えてご自身で発行して貰えばいいですし、受理通知書のコピー(スキャンした画像)で対応できることがほとんどのようです。

スマホで手軽に書類をメールできなかった時代よりさらに前、コンビニでコピーさえできなかった時代。受理証明書が必要になって慌てて発行するのではなく、手元に紙を置いておきましょうね。という話だと思います。多分。

相続放棄にかかった費用と期間と手間

必要書類の取得と相続放棄手続きにかかった費用の総額は、

2,709円

でした(不要な書類を取り寄せてしまったり、2人分まとめて申請したりで、私の場合は5,511円でした。安っ。電話代等は含みません)。

費用はどうでもいいんですよ。司法書士に頼んでもいいと思っていましたし。でも、相続するか放棄するか限定相続にするか悩んで調べている間に、相続放棄の手続き方法が、私の場合は思いの方か簡単そうだと分かってしまったから自分でやっただけです。

つまり、ネットで調べたり、各所に電話で確認したりの手間はそれなりにかかりました。相続放棄だけじゃなく、相続に関する全般を調べるのに骨が折れました。

でも、これは、故人が最期に遺した勉強だと思ってありがたく受け入れました。

相続放棄にかかる期間は

  • 郵送で必要書類を揃える:1週間
  • 相続放棄申述書を書く:1週間(2人分揃えたりなどしたため。ひとりでなら1日で終わります)
  • 照会書が届く:1週間
  • 相続放棄通知書が届く:2週間

5週間ほどで完了しました。

相続放棄の期間は「亡くなったことを知ってから3カ月」ですが、相続放棄の手続きを始めるまでの期間とのことなので、この5週間を3カ月に含めなくて大丈夫です。

「郵送で必要書類を集め始める」は、相続放棄手続き開始にはもちろん含まれないので、書類を揃えて家庭裁判所に送るまでを3カ月以内にできるよう調整しましょう。

残務

区役所から必要書類を取り寄せたとき、余剰分の郵便小為替を受け取っているのですが、まだ換金していません。このブログを書いてからにしようと思っていたのですが、返金分が2021年8月発行の小為替で、半年以内に監禁しないととかあったはずなのでそろそろしなければ。と思っています。します。

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Posted by chinacky★